意思で動かすことの出来ない、心筋や、血管や消化管などの筋肉や、唾液腺、消化腺、汗腺等々を支配している自律神経。

殆どの臓器は、交感神経と副交感神経の二重支配を受けていて、昔であれば、狩をする時に活発になるのが交感神経。

そして、狩も終わりリラックスした時に活発になるのが副交感神経。

この二つの自律神経のバランスが大切だということは、皆さんも知っていらっしゃるでしょう。

そして、実は、原因のわからない心身の不調に、ストレスやトラウマにより変化の生じた自律神経が関わっていることも多いようなのです。

心的外傷と訳されているトラウマ。

子供の頃の虐待や、性的暴力などが深刻なトラウマとなりえることは、多くの人が知るようになりました。

けれど、その体験の後に問題を生じるかどうかは、何が起き、どう感じたか以上に、命を守るために、自律神経系統がどのように働いたかが深く関わっていることは、まだまだ知られていません。

例えば、事故であったり、手術などの医療処置であったり。

誰もあなたを傷つけようとした訳ではなく、むしろ助けようとしたのに、深刻なトラウマとなってしまうこともあるのです。

私たちの身体が、生命の危機と感じる場面に遭遇したとき、通常は先ず交感神経が働き、

「逃走か、闘争か」という準備が進められます。

けれども、そのどちらも不可能となったとき、

今度は副交感神経が働いて、凍りつき、あるいはシャットダウンが起こります。

これが起こると、本来は逃げるか戦うことで解放されていたエネルギーが、解放されないまま、神経系に閉じ込められてしまうのです。

ステファン・W・ポージェス氏が提唱した『ポリヴェーガル理論』をご存知ですか?

一般的には、交感神経系と副交感神経系があって、この二つが拮抗する働きをしていると考えられています。

けれど、『ポリヴェーガル理論』では、副交感神経の主たる構成要素である迷走神経には、背側と腹側、二つの回路があるというのです。

そして、最も新しい神経である腹側迷走神経は、脳幹にて、顔や頭の筋肉を調整している神経と接続し腹側迷走神経複合体を形成しています。

この複合体は生き残るために、「社会交流」という新たな手段を可能にしたのです。

私たちは、闘ったり、逃げたりするだけではなく、表情や声を使って交流し繋がることで解決できるようになったのです。

また、本来は、このシステムが、背側迷走神経や交感神経の制御も行なってくれているのです。

ですから、この腹側迷走神経複合体を癒し活性化することが、精神的な安定を取り戻す鍵だと、私は思っています。

そして、それには、下記参考書の題名にも入っていますが、「安全」であると感じられることと、「絆」が最も大切なのです。

参考図書 『ポリヴェーガル理論入門 心身に変革をおこす「安全」と「絆」』
ステファン・W・ボージェス博士 著