ペイン ボディ エックハルト・トール

「いま、この瞬間」を味方にしないと、感情的な痛みは増えつづけ、痛みを背負って人生を歩むことになります。新たにこしらえる感情的な痛みは、心とからだにすみついている、過去の経験による痛みにくっつき、雪だるま式にどんどん大きくなっていくのです。

 からだに積もった痛みは、ネガティブエネルギーになって、心とからだにくっついています。これが感情の痛み、わたしが「ペインボディ」と呼ぶものです。

『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』P.56


“「いま、この瞬間」を味方にしないと、”と、ありますが、前回の記事で引用した箇所には、“からだを「留守」にしている人の中では、(P.162)”と、書かれています。
つまり、「いま、ここ」に居ない人は「からだ」にも根をおろしていないのでしょう。
そして、そのような状態にあると感情が生き続け「ペインボディ」になってしまうというのです。

更にエックハルト・トール氏は、この「ペインボディ」について、興味深いことを2つ言っています。

1つ目について語っている箇所を引用すると、

ペインボディには、ふたつの状態があります。
眠っているものと、活動しているものです。
(中略)
 ペインボディが、フルに目覚めた状態で、人生を歩んでいる人もいれば、親密な人間関係や、過去の悲しい経験(見捨てられる、失う、肉体的・感情的に傷つくなど)と重なる状況でのみ、ペインボディが目覚める人もいます。どんなささいな出来事も、ペインボディを活動させる引き金になり得ますが、過去の痛みと共鳴する場合は、なおさらです。ペインボディが目覚める準備ができているなら、ちょっとしたネガティブな考えや、誰かの悪気のないひと言でさえ、それを活動させるスイッチになってしまいます。

『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』P.56-57

私自身も、20代の終わり、一つの失敗をきっかけに、まるでパンドラの箱が開いてしまったかのようにネガティブな感情が吹き出してきてしまいました。
どうにかこうにか抑え込んでいた恐れがコントロール出来なくなっただけでなく、人から批判されたり、自分が選ばれなかったと感じた時に込み上げてくる感情の生々しさといったら、命の危険を感じることさえありました。

眠っていた「ペインボディ」が一気に目覚めたと言われれば、そんな気もします。

ボディワークを受けて「からだ」との繋がりを取り戻し始めたのは、それから数年後。
つまり、まだ「いま、ここ」にも「からだ」にも居るとはいえない状態だったのでしょうが、「ペインボディ」が膨らむのも、もう限界に達していたのでしょう。
今もまだ眠った「ペインボディ」を抱えているのでしょうが、通り過ぎてしまえば、ベストなタイミングだったように思えます。

穏やかな日々を送っていた人のペインボディがいきなり目覚めたらパニックになるかもしれません。
それでも、その人は、深いところで、抱えつづけるのではなく、変化を起こす選択をしたのだと思うのです。

次に興味深いことの2つ目を引用します。

 ペインボディには、集合的なものと個人的なものの、ふたつがあります。個人的なものは、各人が過去に被った感情的な傷のかすが、心に積もっていったものです。集合的なものは、過去数千年以上にわたって、疾病、拷問、戦争、殺人などによって、人間の集合心理に積もっていった痛みです。すべての人のペインボディが、この「集合的ペインボディ」を形成しています。

『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』P.222

エックハルト・トール氏の著書で最後まで読んだのは、まだこの『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』だけ。
彼がいう「集合的ペインボディ」について、まだまだ理解しきれてはいません。

ただ、私たちは、この生で生じた感情的な痛みだけでなく、もっと深い痛みを癒すことを計画している場合もあるのでは?なんて思ってきましたから、とても興味があります。


まさに今、活性化した「ペインボディ」に辟易している方がいらっしゃるかもしれません。
ペインボディを「ほんとうの自分」ではない、と認識するプロセスの書かれた箇所を引用して終わりますが、関心を持って頂けたらこの本を読んでみて下さい。

では、ここでプロセスをおさらいしてみましょう。まず、自分の感情的な痛みに、意識を集中させます。それをペインボディだと認識します。「わたしの内面にペインボディがある」という事実を受け入れます。ペインボディについて、解釈してはなりません。判断を下したり、分析したり、自分の都合のために「ペインボディは◯◯が原因だ」などと、決めつけないことです。「いま」に在り、自分の内側を観察しつづけるのです。ペインボディを観察する人になりましょう。これが「いまのパワー」につながる方法です。「いまに在る」ことから得られるパワーです。そうしてから、自分にどんな変化が起こるか、ようすを見ましょう。

『さとりをひらくと人生はシンプルで楽になる』P.61-62