ジル・ボルト・テイラー博士に学ぶ左脳マインド・右脳マインド①

 想像していただけると思いますが、私は神経科学者の視点から、自らの脳が系統的に機能停止するのを観察することに魅了されました。左半球への損傷は重篤で、話したり言語を理解したりする能力を失うことが予想されました。さらに、左脳のおしゃべりな「モンキー・マインド」も黙ってしまいました。内なる対話の回路が遮断されたことで、私はまる五週間、しんと静まりかえった脳の真ん中に、ぽつんと立っていました。「私は全体から切り離された個人。私はジル・ボルト・テイラー博士」というような、左脳の自我の小さな声すら失ってしまいました。おしゃべり好きで、ものごとを順序だてて考える左脳がいなくなり、私は畏敬の念を覚えるような「今この瞬間」という感覚に足を踏み入れました。そこはとても美しい場所でした。
 外部からの知覚情報を処理する左頭頂葉の損傷があり、言語と「個」の意識もなくなったため、自分の体がどこから始まりどこで終わっているのか、その境界を識別することができなくなりました。私の自己認識は大きく変わりました。自分が宇宙と同じくらい大きなエネルギーの「球」だと感じました。完全に右脳の意識へと移行し、自分の本質は、広大で、まるで音のない幸せに満ちた海を泳ぐクジラのように、魂が自由に飛び回っているような感じ。
 脳出血を起こす前の人生で経験していた正常な感情から、安らかな多幸感以外は何も感じない状態になりました。なんだかすばらしいことのように聞こえませんか?(後略)

『WHOLE BRAIN 心が軽くなる「脳」の動かし方』P.16-17)

少々長くなってしまいましたが、37歳のとき、大量の出血のため脳の左半球に重篤な損傷を受けたジル・ボルト・テイラー博士の著書から引用させて頂きました。

彼女の上記体験は、複数の方が語っている臨死体験とよく似ています。
医師が死亡宣告を行う状態になってでも、とは思わなくても、日常で体験できるならしてみたいと思うのは私だけではないでしょう。

多くの人は、成長する中で作り上げた「私」という観念に縛られ、過ぎた過去とまだ来ぬ未来に悩まされながら生きています。

そして、テイラー博士が体験したように、本当は全てが繋がっているのだということを忘れ「私」という個に捉われ過ぎると、行き詰まってしまいます。

昔、バイト先の店長さんから、
「我が強いのは悪いことでは無いんです。我が膨らんでいけば、いつかは割れる時がきますから」と、教えてもらったことがあります。

確かに極限まで振れてしまえば戻るしかありません。

けれど、「私が、私が」と拘り抜いた状態から、全てが繋がっていると思い出す過程は、結構、険しかったりします。

私自身も、テイラー博士が脳卒中のため体験した状態を思い出すため、長い月日を費やしてきたように思います。

それにしても、“安らかな多幸感以外は何も感じない状態”が、左脳のおしゃべりが止み、“外部からの知覚情報を処理する左頭頂葉の損傷”により、“言語と「個」の意識もなくなった”ことでもたらされたというのには、興味が湧きます。

また、彼女の2冊目の翻訳本である『WHOLE BRAIN 心が軽くなる「脳」の動かし方』を読んだあと、かなり前に購入したもののざっと目を通したままだった先の書『奇跡の脳』を読み返したのですが、私たちが思考や感情に振り回されずに生きるヒントが書かれていました。

何回かにわたってシェアさせて頂きます。