トラウマとなりえるもの
もしあなたが、誰も説明できないように思える奇妙な症状を体験しているのであれば、そうした症状はあなた自身の記憶にすらない過去の出来事に対するトラウマ反応から起きているのかもしれません。
『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー 』P.11)
上記はソマティック・エクスペリエンスというトラウマ治療法の創始者であるピーター・リヴァイン氏の著書『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー 』からの引用です。
「ポリヴェーガル理論」という記事で書いたように、トラウマが生じるかどうかは、自律神経系統がどのように働いたかが深く関係しています。
テレビなどでも時々取り上げられますし、身体的、心理的、性的虐待によって、トラウマ的な反応が引き起こされることがあると知っている人は多いのではないでしょうか?
けれど、そのイメージが強くて、トラウマは自分とは無関係と思い込んでいる人も、また、多いような気がします。
上記の本に、トラウマに先行する出来事として10個以上あげられているのですが、最初に、
“ ●胎児トラウマ(子宮内での)
●誕生時のトラウマ”
と、書かれています。
そして、最後の四つは、
“ ●医療、歯科治療の処置
●手術、特にエーテルを使った扁桃摘出、耳鼻科やいわゆる斜視の手術
●麻酔
●長期間の固定、すなわち内反足や側湾症などさまざまな理由によって、幼児の足や胴体をギブスや副え木で固定すること”(p.65-66)
と、医療トラウマがあげられています。
自分を救うために施された医療、
それによってトラウマが生じることがある。
テレビなどでも、あまり取り上げられませんし、知らない人も多いのではないでしょうか?
けれど、上記の本には、
長期の固定や入院、中でもとりわけ手術が引き起こすトラウマの後遺症は多くの場合長期にわたり、重症です。たとえその人が手術の必要性を認識していたとしても、そして外科医が肉や骨を切り開いているときは意識がないという事実にもかかわらず、身体は手術を生死にかかわる出来事とみなします。(中略)トラウマに関する限りは、本能的な神経系のほうがずっと影響力があります。(後略)
『心と身体をつなぐトラウマ・セラピー 』P.66
とも書かれています。
以前、ネット上で、昔の医療は、今ほど乳幼児が体験する痛みに気を配っていなかった、というような記事を読んだことがあります。
確かに、歯の治療も、50年前に比べて今は、痛みだけでなく、音などによって感じる恐怖も随分軽減されました。
精神科クリニックが数多くできた今とは違った昭和。
その時代に、奇妙な症状に悩まされ始めた方のなかにも、医療トラウマの後遺症とは気づかず、ひたすら耐え、乗り越えてきたという方々がいらっしゃるのではないでしょうか。
トラウマによる後遺症が様々なかたちで生活に支障をきたし始めるのは、直ぐとは限りません。
大きな災害もありました。
トラウマというものが、ようやくわかってきたのですから、自分でも訳のわからない奇妙な症状に自己嫌悪を募らせていくといったことが、もう繰り返されないことを願っています。